4匹のニャンズとのほのぼのとした日常
物語3
2009年10月21日 (水) | 編集 |
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僕のアパートは6畳一間とバスとトイレ。
東京の1人暮らしとしてはごく普通だと思う。
僕はここが気に入っていた。
親元から離れ、やっと手に入れた僕だけの空間だ。

どう使おうが僕のかって。
誰にも文句は言わせない。

自炊は大変だが、それでも入学して半年も経てばそれなりに何とかなる。
僕はそうやって1人暮らしを満喫していた。

今日の夕飯は、買ってきた秋刀魚を焼いて、それから1人鍋でもしようか。
今年は秋刀魚が豊漁らしく1匹80円と格安だった。

僕はさっそく秋刀魚を焼き始めた。
それから1人用の土鍋に水を入れ火にかけた。

ここにキムチの素とあり合わせの野菜と肉でも入れれば立派な鍋だ。
男の料理もまんざらじゃない。

全てが出来上がってテーブルにそれらを並べると、僕はテレビに視線を向けた。
そして、視線をそのままにしながら、僕は焼きあがった秋刀魚を口に運んだ。

秋刀魚は美味しかった。
涙がでるくらい美味しくて、そして、僕はいたたまれなくなった。

僕ばかりがこんな美味しいものを食べて、のんきにテレビを見ている。
あの猫は食べる物もなく、死にそうだと言うのに…

僕は立ち上がった。
このままじゃあ、もう一口だって食べられない、そう思ったからだ。

それから部屋を出て、大学へ向かう。
途中のコンビ二でダンボールの箱をもらうと、なんだか心が軽くなった。
あの猫を助けるんだって僕の気持ちが固まったような気がして。

とにかく猫を病院に連れて行こう。
そうすれば、その先はまた、色々な選択肢があるかもしれない。

僕は休まずに走った。
顎が上がって息が苦しくても。
それが、あの時見捨ててしまった自分自身への罰だった。

紅葉したモミジバフウの葉02(白い背景付き) †SbWebs†


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物語2
2009年10月12日 (月) | 編集 |
僕は動物を飼った事がない。
だから、最初それを見た時は正直うろたえた。
積まれていた枯れ葉を手で払うと、そこに居たのは茶色の猫だった。
目も鼻もぐちゃぐちゃで、お腹がペチャンコに潰れた猫はそれでも首を上げようとする。

僕は猫がそんな状況だというのに、手が出せないでいた。
情けないことに、弱った猫を目の前にして途方に暮れるばかりだった。
そんな様子の僕を、他の学生達が物珍しいものでも見るような目を向けながら、それでいて早足ですぐ傍を通り過ぎる。
関わりを持ちたくない、学生ならそう思うのは当然だ。

僕だってそうだ、こんな所に立ち止まっていていったい何になる。
でも、どうしてもこの場所から動けない。

1時間ほどそうしていただろうか。
空がゆっくりと日を落とし始めた頃、僕は不意に肩を叩かれ顔を上げた。

「迷っているなら助けてあげれば?」
その人は見たことも無い人だった。
「食堂からずっと見てたけど、おやつの時間もだいぶ過ぎたし、もう食べる気もないんでしょ?だったら考えることなんて無いじゃん」

あっけらかんとそう言い放つと、その人は踵を返した。
僕はその物言いにムッとした。
僕は別に、おやつと猫の命を計っていたわけじゃない。

確かにここで手を差し伸べるのは簡単だ。
でも、その後はどうする?
お金だってかかるし、第一誰が飼うんだ。

僕は腹立たしさに押されるようにして立ち上がった。
そして何も見なかったかのようにその場を離れた。

紅葉したモミジバフウの葉02(白い背景付き) †SbWebs†


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物語1
2009年10月09日 (金) | 編集 |
わたくし、元々HPでお話を書いていました。
ので、余興というかおまけでちょっとだけここでも書いてみようと思います。
先がどうなるかわかりませんが(いつも行き当たりばったりなので…)出来るだけがんばります(笑)
題名も考えてないので今の所はなしw
その内、いいのがあったらつけますね手書き風シリーズ汗1

ではでは、お暇だったらお付き合いください。




僕の腕の中には、まだ温もりがある。
でも、その温もりの主は、もうこの世にはいない。
ほんの少し前に彼女は逝ってしまった。
遠いどこか、そう…虹の橋の向こうへ。

僕は腕の中で眠っている彼女にそっと最後のキスをした。
すると、それまで止まっていた感情があふれ出すかのように、涙が零れた。

僕は泣いた。
1人きりの部屋で、誰にもはばかる事なく。
そして、それは嗚咽になって、誰もいない部屋に満ちていった。


sikaku2.gif


僕が最初に彼女に会ったのは、大学の食堂の端にある赤いポストの下だった。
学生証の写しが必要だという親からのメールで、面倒だと思いながらもコンビニでコピーを取った僕は、それを封筒に入れここまで出しに来たのだ。
パタン。
ポストの中へ封筒を入れると、僕はそのまま食堂へ向かった。
1歩、2歩、3歩、そして4歩目を踏み出すとき背後から僕は呼び止められたのだった。

「ニャン」
それは小さな声だった。
でも悲しいかな耳が良い僕には届いたのだ。
だが、振り向いてみるとどこにもそれらしき姿はない。
そこにあるのは赤いポストと、それを取り巻くように盛り上がる茶色や黄色くなった枯れ葉だけだ。

空耳か?
そう思って再び歩き出すと、彼女は最後の力を振り絞って声を上げた。
枯れ葉の中から、今にも消えそうな命の声を。


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